友人たちと旅行に行く夢を見た。
友人たちは友人ということはわかるのだが、誰なのかわからない。昔からの知り合いだと思う。向こうも当然のように話しかけてくる。
旅館に泊まることになっており、予約していた旅館に着くと先ず上に上がって、それから木の螺旋階段を下へ下へ降りる。
最下層が私たちの部屋だった。部屋は暗かったが、窓からは風が入ってくるから地下ではない。
部屋はいくつかの平地と段差で出来ていて、それぞれの平地は台形の板張りになっており、ソファと大きな窓のあるリビングスペース、流しと冷蔵庫が置いてあるキッチンスペース、そして階段側から見て一番奥にあるスペースには書き物をするのに良さそうな立派な机が置いてある。
天井は高く吹き抜けになっている。見上げると栗鼠が柱を齧っていた。風の音が凄まじく、友人の一人が窓を閉めようと提案する。
そのうちウエイトレスがやってきて注文を取りはじめるが、私はうっかり頼むタイミングを外してしまい、結局注文をしそびれる。妙にフレンドリーなウエイトレスだった。注文を取り始めてから戻っていくまで軽く10分間は話をしていたと思う。
次の日にはそれぞれ用事があるというから別々に出かけることになって、私は特に用がないので友人の一人についていくことにした。部屋で窓を閉めようと言った友人である。
彼女は「先生」のことばかり気にしていた。
途中までは行く先が同じらしいのだが、「先生」は歩くのが早いのですぐ見失ってしまいそうになる。
「先生」はちょっと変わった人で、気になることがあると上の空になりそれ以外のことが見えなくなってしまうタイプの人間らしい。
先生は、彼女が後ろについてきている事に気づかない。
私は彼女の後ろからついていく。
駅で切符を買い、電車に乗り込んだ辺りで彼女は「先生」を見失った。人が多かったせいではない。電車の席は大体埋まっていたが、車内は空いているといっても良い状況だった。
おかしな点があるとすれば…乗った電車の床がなく、巨大なコイルや親指ほどもありそうな太い針金が露出していたというだけのことである。
「先生」の行く先がこの電車の終点ということは分かっていた。しかし、彼女の行く先はもう少し手前の駅であったので、私は今日のところは諦めるようにと彼女に言った。夕方になれば戻ってくるのだから、と。
彼女が首を縦に振らないことは分かっている。「先生」は前の車両に移動したようだ。彼女は私を置いて行ってしまった。
私は特に用事がないから彼女について来ただけだったのだけれど、今度は私が彼女を見失ってしまった。
仕方なしに、本来彼女が降りるはずだった駅で降りる。
そのまま駅で暫く待ってみたが、彼女が来る様子はない。きっと幾ら待っても来ないだろう。
帰るために逆の電車のホームに移動すると、そこには「先生」がいて、私に気付くと片手を挙げやあ今帰りかいと微笑んだ。
先生を追いかけていったはずの彼女はいない。電車が来る。今度の電車は、床がある。