窓の外には何かが積もっている。白い楕円形の、表面がつるつるした厚手の紙を同じ形に切り抜いたようなもの。どこから入りこんだのか、家の中にも多少積もってしまっている。
家の中には紙が散乱している。
書物、書類、白紙のコピー用紙、ノートの紙片、シュレッダーにかけられた紙屑、人の手で細かく破られた、記録の残骸。
家の中には私しかいないのに、私以外に何人か住んでいる気配はある。
窓の外は暗い。夜だろう。
これは夢だ。と思う。
つけっぱなしのテレビではドラマの三回目が放送されていた。窓から離れた私はこたつに入ってそのドラマを見る。一つの事件が解決して夜道を歩いている主人公と依頼人の前に、凶悪な顔をした花子さんの影が現れた。主人公が貰い物の雑巾を投げ付けると、なにやら効いている。ついでに色々と適当な九字を切ると花子さんは苦悶の声を上げて逃げていった。つづく。
これは夢だ。という自覚がある。自覚があるだけで何もできない。誰もそのことについて何も言わない。
世界が傾いている。家に帰るためにマンションの側面を歩かなくてはならない。遠くまで来てしまった。
道端に立っていた髪の短いお姉さんがテレポートの魔法で飛ばしてくれるというので頼んだら、MPが足りなくてできないらしい。
横にある白い建物の屋根に埋め込まれていた大きな五つの宝玉が無くなっていた。封印は解かれている。だが、今はまだ用がない。
これは夢だ。何の封印かはわからない。
かつて、小説家であった×××××は、窓の外に白いものが積もってゆく夢を見たという。
再びカーテンを開けてみると、窓枠よりも上まで白いものは積もっている。降っているところは見ていないのに、積もり続けている。
このまま生き埋めになるということはないのだろうか。もしそうなったとしてもこれは夢なのだから苦しくないのか、それとも苦しくなって夢から覚めるのか。