原作小説「火星の人」を読んだ
なろう内政モノ(※)の火星版だの、DASH村火星出張版だのと言われていて興味を惹かれたので、映画を見に行く前に原作を読みました。
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映画やるっていってんのに近所の本屋に行っても置いてないという有様 商売する気あんのか?
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※なろう内政モノとは?
「なろう」は「小説家になろう」というオリジナル小説投稿SNSのこと。「内政モノ」というのは、そこでよくある物語のパターンです。何らかの理由で現代人が中世ファンタジー風の異世界にトリップしてしまい、現代の知識をフル活用して政治や経済の分野で無双、みたいな。でもって、手始めに農業をやろうって話になった際によく使われる農作物がジャガイモ。
というわけで、火星の人(オデッセイ)=なろう小説!と言われていた<
主人公の孤軍奮闘パートと、彼が生きていることに気づき地球から全力でバックアップを図るNASAのパートが交互に展開される。
登場人物全員が理性的でクレバーなので意味なく暴力(精神的なもの含む)振るったり振るわれたりは一切ないのがGOOD。
ストレスがないんですよね。
これね、「ジャガイモ育てる?どこから?土壌づくりから?」をやり始め、ソーラーカーを手作りしようとしてる辺りで「あっこれ鉄腕DASH以外の何物でもないわ」と確信しました。
水なし、酸素なし、食べ物は芋。音楽は70年台のディスコ(リーダーの趣味)しかない。つらい。
でもこのディスコはきっと映画でいい役割を果たしてくれるんだろうなあと期待している。
ハードSFなので小難しい科学の話も多いのですが、専門知識がなくても中学くらいの理科の知識があれば何をしようとしてるのかくらいは分かるようになってます。水素2と酸素1で水になる、とか。逆に水を電気分解すれば酸素と水素になる。こういうレベルの知識がちゃんと役に立つ。
そして毎回、「なるほど、そうやって解決するのか!」と感心させてくれる。
当たり前の知識でも、実践できるかどうかは別なんだよね…
何より、主人公がとにかく前向き。なんかもうね、一周回ってバカなんじゃないのか。
おかげで状況はかなりシリアスななのに最後まで笑って読める、元気の出る作品になっている。
まあ、オタクの間で「バカ」って褒め言葉なとこありますからね。苦労してようやく地球と交信できるとなった時、
NASA「これ全世界に放送されてるから言動に気をつけろよ」
ワトニー「みてみて~ おっぱい→(・Y・)」
とか送ってくるやつが主人公なのでお察しください。
原作小説は大部分がワトニーの日記形式で進行する。
読んでて気づいたのは、ワトニーがストレスで眠れなくなったり、飯が喉を通らなくなったりという描写が無いこと。
落ち込んでめそめそしているシーンがない。描かれてないとこではやってるのかもしれないけど。
とにかく目的達成に必要な要素を考えて、一つずつ解決する。なんというか、地に足の着いた頭の良さなんですよね。
たいていの場合は解決が難しい問題が出てきたり、突然トラブルに襲われたりで毎日のように難題がふっかかってくる。
トラブル、難題=しくじったら死ぬ状況だけど「やべーな、いい方法思いつかなかったら死ぬな。まあ、今日はとりあえず寝よう」で一旦済まして本当に寝るw
先に帰ってしまったクルーの荷物を漁って音楽データを見つけたり、くっだらねードラマシリーズを見て息抜きをするのも忘れない。
こういうある種の図太さは極限状態で生き延びるのに大事な要素なのだろうなと。
で、一晩寝て落ち着いたら手持ちのカードで打開策を練る。
そのあと、考えたことを地道にこなす。
基本的にはこの繰り返し。
この小説はもともとWeb連載していたらしく、なろうの異世界チート小説火星版みたいだな~という印象は実際その通りだったわけです。
日記形式だから、ちょこっとずつ更新しやすいのね。そして、次々と襲いかかる難題→解決、という手法も。
ただし異世界無双と違うところは、後出しで実はこれがありましたとか、現実にできそうにない謎技術のようなチートができないところか。
ワトニーのエリート技術屋っぷりとメンタルの強さがチートだと言ってしまえばそれまでなんだが…
あと、芋とガムテープ(ダクトテープ)は宇宙でも強い。なろうでの定番便利アイテム、芋の次はガムテープが来ると思う(きません)
今日、レイトショーで映画を見に行く予定なので帰ってきたら映画版の感想を追記します。
映画を見てきたので追記。
公開2日目なのに客の入りは3分の2ほど。まあ、田舎の映画館なんてこんなもんです。
内容としては、原作のダイジェスト版みたいな感じでしょうか。かなり駆け足ですね。
数々のバカなエピソードも削られてますが、シリアスにもなり過ぎず、非常に前向きな映画で楽しく見られると思います。
足を引っ張るバカ、感情的に怒鳴り散らすバカ等のストレス要素もないので。
あと、うんこ成分は最小限。原作のワトニーはかなり口が悪いのだが、これも最小限。まあ仕方ない。天下のハリウッド映画であまりシモの話ばかりするのもまずいだろう、多分。
そういえば、ワトニーには恋人も妻も子供も、離婚した妻もいないんですよ。両親も出てこないし。
愛だの何だのでお涙ちょうだいに時間を裂いてるシーンが全然ない。
原作でモテたいモテたい言ってるあたり、モテない設定なんでしょうかね(このあたりも映画ではカットでしたが)
恋愛の話はサブキャラのほうでちょこっとやってるだけで、主人公は全くそういうの無し。
これ実は珍しいんじゃないですかね?
やはり映像の利点は、ハブだのローバーだの上昇機だの、言葉で説明されただけではいまいち想像がつかないものが分かりやすくなるところですね。
映画を見た後小説を読むと、どんな状況なのかより想像しやすくなりました。
にしても、よくこんな火星らしい場所見つけてきたなあ。
ローバーは農業用の車を改造して、実際に砂漠を走らせたらしい。この車がごつくてかっこいい!(公式youtubeで話が聞けるのでぜひ)
まとめ
面白さ:〇 原作をいい感じにまとめてある 人間の善性を信じられる明るく希望のある映画
不快度:なし 序盤にちょっとだけ痛そうな描写あり。その他はみんな頭がいいし良い人ばかりで不快な描写は少ない あと主人公は恋人なし独身なので恋人や親子の関係修復の話がねじ込まれたりもしない
人に勧めたいか:〇 無難なので勧めても問題が生じることは少ないと思う 面白いと思ってもらえるかは運
再視聴:〇 原作は既に何度か読み返しているので、原作を持っていなかったら映画を見てただろう と考えると〇