ぬじろぐ

配布とフレンドに全力で寄りかかるソシャゲ日記

変身の夢

夢の中で、私は「彼」の視点になっている。

彼が夜中に目を覚まして階段を下りてゆくと、階下に見知らぬ女が立っている。
女が何をしにきたのかは分かっている。<私>を殺しに来たのだ。しかし、不思議と恐くはない。女に話しかけようと薄暗い階段を下りる。
「何か」を踏んだ拍子に一番下の段で足を滑らせ、仰向けに倒れる瞬間女が声を出さずに笑っているのが見えた。

それから然程時間はたっていない。気付くと夜が明けていた。
夢だったのか、それならばなぜこんなところで引っ繰り返っていたのだろう。
彼が部屋に戻ってみると、ベッドに横たわっているのは紛れも無く彼自身である。
正確には、少し前まで彼自身として生きていた、首を切られた死体だった。

では自分は一体何なのか…彼が横の鏡に目をやると、そこに映っていたのは植物と猿を合成したような奇怪な生き物だった。
彼は恐怖に駆られた。本当にそれが自分の姿なのかもよく確認しないまま部屋を飛び出し、暗い廊下を走った。
誰に見つかってもいけない。早くどこかに身を隠さなければいけないと強い焦りにとらわれていた。

勢いよく玄関を飛び出し、そのまま塀を乗り越え――普段の彼には不可能なほどに軽々とそれをこなせたことに、何の疑問も持たない――裏の山を目指す。
この辺りは気候も穏やかだ、野宿をしてもきっと死ぬことはないだろうと彼は考える。
見たことのない生き物の姿をした彼に、鴉たちが驚いて襲いかかってくる。だがそれも、木の密集した場所に到達すると諦めて何処かへ飛び去っていった。
安全を確認するとまた彼は移動し始めた。
猿のような姿はいつの間にか別のものに変わっている。爪はなくなり、姿もモルモットに似たものになった。
誰が作ったのものか、石造りの階段を登りながら、ようやく彼は考える。
もう少し人里にいても違和感のない生物の姿に変化したら、家に帰ってみよう、と。