ぬじろぐ

メモです。議論やコメントは受け付けておりません。当方オタクの女ですので、唐突に腐ったりします。注意。

植物園

冷凍庫に保存しておいた、死んだ人の顔(原形をとどめていない物もあったが、学校の友人がある程度修復してくれた。こういうことは得意なのだそうだ)が何枚もお面のように並べて入っている平べったいお菓子の空箱と、本と、その他の学校の荷物を持って実家を出る。
駅へ向かう道をまっすぐ進むと、船に乗れる。あそこまでは新幹線で行くより船で行った方が遥かに安くて早い。

 あそこ。
 ディズニーランドのような夢の国。でも、その中にはコンビニもあれば家もある、普通のマンションだって建っている普通の住宅地と変わらない。
入り口は二つあり、一つは通常の入り口。こちらは入るときにもアトラクションが用意されている。もう一つが、体調の悪い人用の入り口、らしい。何処かのショッピングモールのような出で立ちで、入るとすぐにコンビニがある。どちらも入場券が必要だ。

 通常入り口前には、この前起きた事件のせいで警察がごった返していた。
 もう一つの入り口前には一人見張り役の警官がいるだけで、気分が悪いのですが、と言うとあっさり通してくれた上医務室の場所も教えてくれた。
 別に嘘は言っていない。気分が悪い事に変わりは無い。

 この前起きた事件。
 私もその場にいたのだ。

 その時も、彼に用があった。箱に入れた死体の顔を持って、彼に会うべく通常入り口から中に入った。
 アトラクションは数人のグループひと塊で楽しむ事になっている。それが他人だろうと関係ない。私の時は、二人の知らないお姉さん、知らない男の人、そして私の四人だった。
そして、男の人が殺された。
 関係者は全員追い出され、仕方無しに私は帰省した。
 ・・・顔の入った箱を持ったままで。

 入り口から入って直進、ずっと道を進んだところに庭園がある。ドーム型に渡した鉄筋にガラス張りの植物園の中に、黒い服を着た痩せていて背の高い、検死官・プロファイラー・探偵・霊媒師・死霊遣い・・・?どれだか分からない。けれど、とてもどれとでも取れる感じの男の人がいる。最後の死霊遣いと言うのは言い過ぎかもしれない。少なくとも死霊を操っている現場を見た事は無いのだから。しかし、少なくとも霊媒師くらいは言ってもいいだろう。死体を見て魂がどうこうと言っていた事はあるし、所謂幽霊のようなものもその気になれば見えるらしい。そこに住んでいるのかどうかは分からないが、いつもその場所にいる。見た目は若そうだが、実際の所は若くても20代後半だろう。
 初めて来た時は私一人ではなく、学校の友達と一緒だった。ガラス張りの癖に薄暗い植物園の中で、いきなり機械で出来た巨大な蜘蛛みたいなものをけしかけられた時は驚いたが、彼にしてみれば単なる悪ふざけだったらしい。

 彼は頼れる人だという事を、今の私は知っている。
途中で何度か、片手にスポーツドリンクのボトルを持ったジョギング中の女の人や、自転車に乗った人とすれ違った。マスコットキャラのぬいぐるみもそれらしい建物も、ポップ・コーンを売っている露店すらも見当たらない。一体何処が夢の国だというんだ。
 庭園に入ると左手にあのときの機械蜘蛛が座っていた。人が入ってくるのを見て一瞬立ち上がりかけたが、私だと分かると安心したように動きを止めた。ハリウッドの映画に出てきそうな機械だと、見るたびいつも思う。
 何処にいるのかと見回してみると、右側に少し入ったところで逆立ちをしながら本を読んでいた。相変わらず意味の無い事をする人だ。
「こんにちは」
逆立ちをしたままの彼に声をかけた。
 こちらに気づくと流石に逆立ちはやめて、私にその前にある椅子に座るように勧めた。テーブルの上には冷め切った紅茶が置いてある。一体いつから逆立ちをしていたのか。
私は立ったままで持ってきた箱を手渡した。彼はそれを受け取ると、すぐさま蓋を開けた。平気な顔で中身を見て、また蓋を閉じた。
 そして、語り出した。

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